11月は僕が生まれた月。
暑すぎず、寒すぎず、一年でいちばん好きな季節です。
そろそろセーターを着ようと思ったら、
クリーニングに出し忘れていたのに気付き、
自分で洗ってみることにしました。
ネットを使えば洗濯機でも洗えますが、
手洗いの方が良い感じに仕上がりますよね。
ウール専用の洗剤に重曹をスプーン一杯くらい入れて洗うと、
臭いが取れ、肌触りがふわふわ・さらさらで、
色合いも自然で良い感じに仕上がります。
干し終わったら、特にやることもなかったので、
かみさんと出かけることにしました。
と言っても、行くあても特になく・・・
そうだ!久しぶりにビーチテラスに行ってみようよ。
ママに電話すると、やっているとの返事。
ということで、日立へ出発!
水戸から日立へは国道6号線でも直接行けますが、
時間に余裕がある時は、海沿いの道を走ってみたくなります。
もちろん国道245号線のことです。
久慈川を越えたあたりで国道245号線へ下ると、まず港が現れ、
内陸の街とは違った景色に気分が高揚してきます。
「日立港入口」交差点で右折して、すぐに左折すると最初の海岸に到着。
久慈浜です。
ここは日立の他の海岸よりもこじんまりとしていますが、
ひっそりとしていて、なんとなく品のある感じが個人的に好きです。
これは夏の思い出。
遠くに灯台も見え、なかなか素敵な場所ですよね。
波乗りする人、
犬と散歩する人、
はしゃぐ子どもたち・・・
デートにもぴったりのスポットかもしれません。(笑)時にはこんなお知らせもありますし。
末永くお幸せに!
久慈浜からは海沿いに道路が続いていないので、他の海岸へ行こうと思ったら、
いったん245号線に戻る必要があります。
あの灯台は「日立灯台」という名前で、「古房地鼻」という場所に建っているんですよ。
ちょっと寄ってみましょうか。「メープルカフェ」の辺りで右折すれば「古房地鼻」に出られます。
周りは公園になっているのですが、見晴らしが良く、どことなく異国的な雰囲気があり、
ここへ来ると、僕はシドニーのボークルーズ(Vaucluse)辺りを思い出します。
日が暮れると・・・
あれは日立港の灯り。
この辺りは、なかなかムードがあるでしょう?
そのまま245号線を進んでいくと、左手に巨大な風車が見えてきて、
その近くの「望洋台一里塚ロードパーク」からも海を見渡せますが、
せっかくだから、海にもっと近づいてみましょう。
おすすめはこのルート。
「大みか駅入り口」交差点をすぎ、左手にあるガソリンスタンドを越えた辺りで、
右手の狭い道に入って行くと、「田楽鼻」と呼ばれる、海にちょっと突き出たところに出ます。
ここにはちょっとした「いわれ」があります。
眺めがとてもいいので、ここから異国船の航行を見張っていたんですね。
ちなみに「田楽鼻」という名前は、ここが東金砂神社、西金砂神社の神が水木海岸に
浜下りする神事(大田楽)の舞台となることに由来しているんです。
大田楽(大祭礼)は、西金砂の神が7日間かけて海への道を往復し、
続いて東金砂の神が7日間かけて浜下りする、全国でも珍しい神事です。
その際にここで「田楽舞」が奉納されるそうです。
72年毎に行われるので「二度見るものは稀」とされ、
貝のような台座の石には「2003年3月大祭礼記念」と彫られていて、
2003年に72年目の大祭が行なわれたことを示しています。
僕はこの人生では見るチャンスがなさそうです。(笑)
さて、田楽鼻の前を進んでいくと、道がどんどん狭く、下り坂になり、
そのまま行くと水木海岸に抜けられます。
245号線には看板が立っているので、適当なところで右折してください。
ここから隣の河原子まで、海沿いに直線道路が3キロくらい続いていて、
視界を遮るものが何もないので、走っていてとても気持ちが良いんですよ。
日立の海沿いの道といえば、海に突き出た「日立バイパス」もありますが、
人工的な道路よりも自然な海岸線の方が僕は好きです。
ここは本来、日立で最も美しい海岸線のひとつだと思うのですが、残念なことがあります。
かつては夏になると人々が泳いだり、漁師が魚を引き上げたであろう、
長い海岸線のほとんどがコンクリートのバリケードで封鎖され、
50メートルほどの砂浜だけが、かろうじて開放されているからです。
大きな地震と津波の後だから当然といえば当然ですし、砂浜の侵食を防ぐためなんでしょうが、海岸線の本来の美しさが生かされていないのは非常に残念です。
ここを走っていると、神戸の風景を思い出します。
どちらも海と山に挟まれた細長い街ですが、神戸になくて日立にあるものは、海。
(「海」ではなく「海岸線」と書くべきですね。)
今から20年以上前、学生の頃のことです。
街中にいると時々うっとうしくなり、海を見たくなりました。
(僕は時々そうなりましたし、今でもそう感じることがあります。)
そういう時、バイクに乗って出かけたのですが、海は住んでいた場所から遥か彼方にあり、
コンクリートやアスファルトで切り刻まれ、固められていました。
仕方ないので、川沿いの細い道を下って行くと、河口近くに小さな「浜辺」がありました。
これはかつての海岸線の名残りで、近くに「かつての防波堤」もありました。
で、海が見たくなると、バイクで10分くらいのこの「浜辺」で、
遠くをぼんやり眺めたり、散歩している人を眺めていました。
そこが村上春樹の小説に度々登場する風景だと知ったのは、
近くの巨大高層アパート群で、お歳暮配達のバイトをしていた時だったか。
ガールフレンドから借りた小説には、この風景がところどころで登場しました。
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[note]ねえ、もう二十年も昔になるかな、夏になると僕は毎日この海で泳いでいたんだよ。
海水パンツをはいたまま、家の庭先から海岸まで裸足で歩いて通ったんだぜ。
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もっと大きくなってからは、夕方になると犬をつれて海岸道路を散歩したものさ。
砂浜で犬を放してぼんやりしていると何人かのクラスの女の子たちに会えた。
運がよければ、あたりがすっかり暗くなるまでの一時間くらいは彼女たちと話しこむことだってできた。
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一時間後にタクシーを海岸に停めた時、海は消えていた。
いや、正確に表現するなら、海は何キロも彼方に押しやられていた。
古い防波堤の名残りだけが、かつての海岸道路に沿って何かの記念品のように残されていた。
それはもう何の役にも立たない、古びた低い壁だ。
その向こう側にあるものは波の打ち寄せる海岸ではなく、コンクリートを敷きつめた広大な荒野だった。
そしてその荒野には何十棟もの高層アパートが、まるで巨大な墓標のように見渡す限り立ち並んでいた。
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僕は予言する。
五月の太陽の下を、両手に運動靴をぶら下げ、古い防波堤の上を歩きながら僕は予言する。
君たちは崩れ去るだろう、と。
何年先か、何十年先か、何百年先か、僕にはわからない。でも君たちはいつか確実に崩れ去る。
山を崩し、海を埋め、井戸を埋め、死者の魂の上に君たちが打ち建てたものはいったい何だ?
コンクリートと雑草と火葬場の煙突、それだけじゃないか。」(五月の海岸線/「カンガルー日和」所蔵)[/note]
神戸という街の本来の魅力は、
都会的で洗練され、モダンでシャレていることよりも、
海が身近に感じられ、気軽にいつでも浜辺に行くことができた
ということなのだと、その頃思いました。
とにかく、水木海岸がこれ以上消え去らないことを望みます。
海岸線を埋め立てて住宅やバイパスをつくったりしないでほしい。
さて、そこを抜けると河原子海岸にたどり着きます。
ここは日立で最も大きく、最もにぎやかな海岸のひとつですよね。
もっと北の「鵜の岬」も良いですが、ここもちょっとしたリゾート的な雰囲気があります。
シーズンになると海の家が建ち、イベントも開かれ、県内や県外ナンバーの車が並びます。
海鳥も並びます。
海鳥といえば、10代の頃学校をサボって、ひとり自転車で海へ行ったことがあります。
水戸から海まで自転車で行くのは、かなりの遠出でしたが、
川沿いの道をひたすら走って行くと、意外と簡単でした。
季節外れの浜辺には人気がなく、流木があちこちに落ちていて、
海鳥が群れを成して羽を休めていたっけ・・・
そういえば、あの時も冬だったような。ダッフルコート着ていたし。
ここは夏も良いですが、今日みたいな肌寒い日に来るのも良いです。
河原子海岸の端まで来たら、いったん245号線に戻りましょう。
ここからも道路が続いていないからです。
今日はどういうわけか、道のりがとても長く感じます。
こんなに遠かったかな。
こういう時は音楽でも聴きましょうか。
Ben Wattの「North Marine Drive」なんてぴったり。
Ben Wattは、後にEverything But the Girlで知られることになりましたが、
これは1983年にイギリスのCherry Redから発表された記念すべきデビュー曲。
とても美しいアコースティックなので聴いてみてください。
海沿いを走ると、心の中にこの曲が流れてくるのですが、
いつ聴いても本当に良い曲です。
[note]I’ve been down to North Marine Drive
A road curling round by your sea
A sea that matches all of your moods
A place where we always agree
(from Ben Watt, North Marine Drive)[/note]
会瀬町まで来ればもうちょっと。
適当なところで右折すると会瀬海岸に出られます。
ここもひっそりとした感じの海岸で、派手さがないのがいい感じ。
ここは河原子辺りよりも地震と津波の被害は少なかったのかもしれませんね。
海の近くに立ち並ぶ人家で、人々の暮らしが続いているのがうかがえるからです。
ビーチテラスに着くと、ちょうどお茶の時間でした。
「あぁ、いらっしゃい!今日はあいにくの天気ね。」
ここへ来る時は、なぜか曇っている日の方が多いんですよ。
水戸の方は晴れていても、こっちへ来ると曇っていたり。
気温も違う気がする。こっちの方が暖かいかも。
「そうね。この辺りは冬暖かくて、夏涼しいのよ。河原子あたりよりもちょっと暖かいんだって。」
やっぱりそうなんですね。海辺は気候が違うんですね。
「そうね。夏は海に入るんだけど、身体がすぅーっと涼しくなって、
クーラーなんていらないし、蚊にも刺されないのよ。」
「ところで、今日はどうする?」
ちょっと寒いからコーヒー飲みたいな。コーヒー頼もうかな。
「Ok。マスター、コーヒーふたつ。天気の良い日に炒っておいたから、美味しいんじゃないかな。」
そうなんですか。天気と関係があるんですか。
「そう。うちは、晴れてカラッとした日にコーヒーを煎るの。
色で判断しているんだけど、豆が湿気を吸うと良い感じの色にならないし、時間もかかるから。」
へぇ、そうなんだ!面白いですね。
「コーヒーは焙煎したてが香りよく、3日目、4日目がいちばん美味しいと思うんだけど、
うちは1周間以内に使い切るようにしているの。」
ふうん、じゃ、豆を買ったらどう保存すればいいんですか。
「コーヒーは生きていて、内側から油がにじみ出てくるのよ。
その油が酸化すると風味が悪くなって不味くなるんだよね。
だから紙袋に入れて、タッパーに入れておくか、紙袋に入れて、冷凍庫に入れておくのがいいと思う。
豆の油が染み込んだ紙袋を何度も取り替えると、焙煎したての豆の味がよみがえってくるわよ。」
美味しい!今日もコーヒーだけでは済みそうにないな。(笑)
じゃ、ピザ頼もうか?
パニーニも!
「どっちもマスターのお手製だから美味しいわよ。」
期待を裏切らず、どちらも美味しい!
くつろいでいると、ママが大きなビンを持って登場。
「これは山葡萄。とっても渋いけど、これでお酒を作るの。おいしいのよ。
そういえば、裏山のツワブキみた?もうすぐ終わっちゃうから、日が暮れる前に行ってみましょうよ。」
ママに連れられて、ちょっと散歩。
ツワブキは、キク科の植物で、海岸に生える植物とか。確かにキクに似てる。
白いのはハマギク。
あれっ、あんなところに穴が・・・
「あれは昔の防空壕の跡。戦争中はあそこに隠れたみたいよ。
入れないようになってるから、中は見れないけどね。」
知らなかった!こんな海辺にも防空壕があったんだね・・・
「オキザリスもあるから、持っていく?」
え!いいんですか?部屋に飾りますよ!
日が傾いてくると海は不思議な色になるんですね。
「水平線の向こうにのぼる月の色は赤々としてるのよ。今日は見えないけどね。
日によって月がのぼる時刻は違うけど、波に乗った夜光虫は月明かりに照らされて光るの。
とても幻想的できれいだから、いつか見せてあげたいわね。」
すっかりくつろいだから、そろそろ帰ろうか。
前から思ってたんだけど、ママってさ、なんだか魔法使いみたいじゃない?
そうだね。ここに来ると魔法のような時が過ぎていくよね。
いただいた花を飾ると、一瞬潮風の香りがしました。
ビーチテラス
317-0074 茨城県日立市旭町3-19-25 0294-21-8184
11:30~18:00 金土日祝営業 月火定休