茨城の地酒 桜川市真壁町 西岡本店の花の井 酒蔵見学記

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僕らが真壁を訪れるきっかけとなったのは、森コミいちで売られていた古代米のおむすびでしたが、そこでは「花の井」という銘柄の日本酒も売られていました。

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初めて目にする銘柄でしたが、神社の古代米でつくられた日本酒は珍しかったので試飲してみると、これがなんとも不思議な味わい。

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というわけで、今回は「花の井」をつくっている真壁町の老舗酒造元、西岡本店について書いてみたいと思います。

近江商人創業の西岡本店

真壁には江戸時代に10軒、戦前に6軒の酒造元があったそうですが、現在でも3軒の酒造業者がお酒をつくり続けており、そのうちのひとつが今回ご紹介する西岡本店です。

場所は真壁伝承館から徒歩10分(750m)の距離。登録有形文化財が立ち並ぶ町中から真壁小学校方面に向かっていくと、800年の歴史を持つ鋳物工場、小田部鋳造の向かい側にあります。

茨城県桜川市真壁町田6-1

 

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これまでにも酒蔵を見学に行ったことはありますが、ここは大きいですね~!

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どれくらいあるんだろう・・・

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昔モーニングに連載されて後にドラマ化された、尾瀬あきら氏の「夏子の酒」を思い出しますね!

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これから仕込みが始まるようですよ。

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あまりウロウロしていると怪しまれますから、中に入ってみましょう。(笑)

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もちろんここも登録有形文化財に指定されています。

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こちらがおかみさんと、今回蔵の中を案内してくださる従業員の下田春奈さん。

下田さんは、筑波大学を卒業後、こちらに勤め始めたそうですが、その就職のエピソードがユニーク。卒論のテーマに真壁を選び、真壁の町の人の話を聞いて回るうちに真壁の魅力にハマってしまい、伊勢屋旅館でアルバイトをしているうちにこちらのご主人に声をかけられて働くことになったとか。お話を伺っているうちに「真壁♡」の強さが伝わってきました!

こんにちは!よろしくお願いします。

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西岡本店の創業は天明2年(1782年)。初代の西岡半右衛門が近江国日野(滋賀県日野町)から真壁に移り、「近江屋」を創業したのが始まりだそうです。現在のおかみさんも滋賀県から嫁いでこられたそうなので、ここには「近江商人」の血と伝統が脈々と受け継がれているんですね!(近江商人:鎌倉時代から戦前にかけて活動した近江出身の商人のことで、近江国外に進出して活動した商人を指す。)

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真壁町の酒造りと水

酒蔵に入る前に真壁の水について触れておきましょう。水は酒の成分の8割を占め、風味や味を大きく左右するため酒造りの成否を分ける非常に重要な要素だからです。

江戸時代に書かれた「本朝食鑑」(1697年)でも「酒造りではまず水を選ぶことが第一。次が米を選ぶこと」と、水の重要性がことさらに強調されており、他の条件が揃っていても水が悪ければ良い酒はつくれないということは古くから知られていたようです。

本朝食鑑:江戸時代前期の医師、人見必大が著した書物で、日本の食物全般の性質、能毒、滋味、食法などを説明している。)

「灘の生一本」で知られる神戸市灘区が酒処になったのは、酒米として有名な「山田錦」に加え、西宮市に湧き出る「宮水」のおかげであるというのはよく知られるところです。したがって、日本酒を造る際には原料となる米仕込みに使われる水がポイントとなります。

仕込み水:酒の原材料として用いる水で、製造時に米などの主原料とともに容器に入れて発酵させる。ミネラルが豊富な硬水で仕込むと辛口の酒に、少ない軟水で仕込むと甘口の酒になりやすいとされる。宮水は硬水で知られる。)

茨城の酒を選ぶ際も、大吟醸、吟醸、純米、本醸造といった区分だけでなく、仕込み水の種類(水系)で選ぶといいでしょう。

茨城のお酒を水系で区分すると、

久慈川水系

那珂川水系

筑波山水系

鬼怒川水系

利根川水系

に分かれ、真壁の酒が属するのは筑波山水系となります。

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この水系には県内で最も多くの酒蔵が存在し、銘酒として知られるものも多く、個人的にもお勧めです。

実は、今回真壁の酒造りの記事を書こうと思ったきっかけのひとつは真壁の水の良さでした。栗最中で有名なみよしやさんで出された水の美味しさにビックリしたんです。(三由屋菓子店 茨城県桜川市真壁町古城52-1 0296-55-0724)

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自家ブレンドのコーヒーもすっきりとしてえぐ味がなかったので、お店の方に「特別な浄水器を使っているんですか?」と尋ねると、「水が美味しいというのはよく言われますが、普通の水道水なんですよ」という返事が返ってきました。

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「どうして真壁の水はこんなに美味しいんだろう?」と首をひねっていると、その秘密は「山の伏流水」にあるということがわかりました。

「伏流水」とは河川や山麓の下層にある砂と小石の地層を流れる地下水のことで、ミネラルウォーターの原料となることも多いので、ご存じの方も多いと思いますが、真壁の伏流水は筑波山系の山から湧き出ているため、河川の伏流水とは異なります。

ここは日本有数の花崗岩(御影石)の産地ですが、石は山から切りだされて加工されます。

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この山々に降り注ぐ雨は地中深くをゆっくり流れ、「花崗岩」という自然のフィルターを通してろ過され、飲んで美味く、酒造りに不必要な要素が取り除かれた良質の仕込み水となって湧き出てきます。

つまり山が浄水器の役割を果たしているわけですが、実際、家庭用の良質の浄水器にも「長石」などの花崗岩が採用されているんですよ。

水のついでに続けると、この「長石」と呼ばれる鉱物は花崗岩の主成分のひとつで、陶磁器の上薬として用いられ、古くから「薬石」としても知られ、現在でも鎮痛・水質浄化作用があるとされ、石鹸や入浴剤、化粧品などで用いられているんです。

興味深いのは、水質浄化作用があるという点です。

一説によると、長石のような鉱物の結晶には電磁気的な働きがあり、地下水を活性化させて水分子の塊を小さくするため、浸透性が高まって殺菌力を持つようになるそうです。

そのように活性化された水を「酸化還元電位が低い水」と呼ぶそうですが、最近話題の「水素水」が身体に良い理由でもあるようです。

「酸化還元電位」という言葉は知らなくても、昔から山の谷川に落ちた落ち葉は腐りにくく、同じ川でも下流に行くほど水が澱んで腐りやすいということは経験則的に知られています。また、渓流や滝が流れる場所に行くとリラックスして気分が良くなるのは、マイナスイオンによる「酸化還元作用」のおかげであるというのも知られていることです。

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つまり、山の岩清水や谷川の清流、麓の下層を流れる水には、塩素消毒された水道水にはない「エネルギー」があるわけです。

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これが真壁の水のハッとする美味しさの秘密だったのです!近江からやって来た初代が酒造りを始める際の決め手となったのは、真壁の水の良さだったのでしょうね。そして、これが西岡本店の仕込み水を汲み上げる井戸です。「花の井」という銘柄は、かつて井戸の傍らに大きな桜の木があり、毎年見事な花を咲かせたことに由来するそうです。

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西岡本店の酒蔵見学

では、春奈さんの案内に従って酒蔵の中を見学してみましょう!

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酒蔵の中は清潔が第一なので、入る前にまずアルコールで消毒です。

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ほら、ここにもちゃんと書かれていますよ。

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酒造というと「夏子の酒」に出てきた佐伯酒造のような古めかしいものを想像していましたが、中は意外に近代的で、昔ながらの道具とともに併用されています。

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日本酒は米と麹と水が主な原料ですが、米のデンプン質を糖化させ、さらにその糖を発酵、アルコール化させるという特殊な製造工程を経てつくられます。酒造りの工程を簡単におさらいしてみましょうか。

 

第一段階は、酒造に適した玄米を精白し(精米)、水で洗って水分を調整し(洗米・浸漬)、蒸すこと(蒸米)。

お!お米の入った袋が並んでいます!「酒造用精白米」と書かれています。

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これは山田錦ですね!50%というのは精米歩合(米を削って磨いた割合)という意味です。

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真壁でも山田錦がつくられているんです。「真高」というのは真壁高校の田んぼでとれた米という意味。西岡本店は真壁高校と提携して酒造りを行っているんです。

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こちらはコシヒカリ。精米歩合60%。

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こちらは五所駒瀧神社でとれた古代米。

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五所駒瀧神社の記事で書きましたが、真壁では非常に質の良いお米が取れるため、良い日本酒をつくるうえで重要な2大条件(水と米)が揃っているんです。

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高校生杜氏たちもがんばってます。水が冷たそ~!

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第二段階は、蒸した米に麹(こうじ)の種菌を生やし、米麹をつくること(製麹)。

製麹は酒造りのキーポイントで、昔から「一麹、二酛(酒母)、三造り(醪発酵)」といって麹造りが最重視されてきました。こちらが麹室(こうじむろ)。

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酒造りは極寒の季節に行われますが、麹室の中は真夏のような温度。

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麹づくりは一番重要とはいえ、絶えず汗をしたたらせながら行う作業は過酷ですよね。

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こちらができあがった麹。

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第三段階は、水に蒸米、麹、酵母を加えて発酵させ、健全で優良な酵母を増殖させること(酒母づくり)。

酒母は「酛(もと)」とも呼ばれ、酒のもととなる大切な工程です。

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第四段階は、酒母、麹、蒸米、水を仕込み、3週間から1ヶ月くらいかけて発酵させること(醪づくり)。

ここで麹菌の酵素による糖化と、酵母による発酵が同時に進行します。

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醪(もろみ)をつくる最中は二酸化炭素が大量に発生するため、気を抜くと事故が起こる可能性があるそうです。入り口の扉にも「酸欠作業場 関係者以外立入禁止」と書かれています。

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第五段階は、健全に発酵を終えた醪(もろみ)を搾ること(上槽)。

醪を槽(ふね)と呼ばれる特殊な圧搾機で絞り、酒と酒粕に分けます。

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こちらも形は異なりますが圧搾機。

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スーパーなどで売られている板状の酒粕は、こういう圧搾機で絞ってつくられるそうです。

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おおっ、出来た!

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第六段階は、上槽した酒から澱(沈殿したかす)を取り除き(おり引き)、活性炭などで濾過し、60度~65度で加熱して酵母や酵素の働きを止め(火入れ)、タンクや瓶などに貯蔵すること。

これで「原酒」の出来上がりとなります。

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貯蔵用のタンクがずら~っと並んでいます。

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9000ℓとか10000ℓと言えば、ひとつに一升瓶5000本以上の量のお酒が入っているということになります!

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第七段階は、原酒に水を加えてアルコール度数を調整し(加水)、2度目の火入れを行い、瓶詰めしてラベルを貼って出荷すること。

いよいよ最終段階。これが製品となった西岡本店のお酒ですが、あとで詳しく紹介しますね!

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酒蔵の中を案内してもらったのは今回が初めてですが、日本酒の製造工程はずいぶん複雑です。また原料と製造工程の違いによって種類が区分されるため、他の酒に比べるとわかりずらい印象があります。実際の現場に立ち会ってみないと酒造りの大変さは実感できませんが、今回の取材でちょっと理解が深まりました。

西岡本店の杜氏を務めているのは小川清司さんという方で、今回の取材ではお会いすることはできませんでしたが、新潟の魚沼から毎年来ているそうです。皆から「親方」と呼ばれて親しまれている、とても穏やかで楽しい人なのだそうですが、一度お会いしてお話を伺ってみたいです。

西岡本店代表へのインタビュー

蔵の中を見せていただいたところで、現在の㈱西岡本店の代表取締役を務める西岡勇一郎さんにお話を伺ってみることにします。

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どうもこんにちは。今日はお忙しい中時間を割いていただきましてありがとうございます。

いえいえ、こちらこそ、来ていただいて感謝しています。

蔵の中を見学させていただいたのですが、思っていた以上に設備が近代的なのに驚きました。

そうですか。

ええ。「夏子の酒」に出てくるような蔵を想像していたもので。(笑)

でも日本酒をつくる技法自体はずっと変わらず、進歩していないんですよ。主に三段仕込みでつくられますが、米と水の割合と酵母が要となります。

三段仕込み:醪造りの工程において、酒母へ麹と蒸米を三段階に分けて加えていき、酵母の活性を損なわないようにすること。)

ええっ、変わっていないんですか!

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ええ。変わった点と言えば、木の樽がステンレス製になり、温度計からコンピュータ化されたデジタル温度センサーになったことでしょうか。それによって温度の管理が正確になり、そのおかげで味が安定した酒を造れるようになりました。

なるほど。日本酒造りもコンピュータ化の時代なんですね。

米の良しあしに関わらず、美味しい酒を造ろうと思ったら、原料の管理と設備投資が必要になります。例えば、同じ15度でも「上がり傾向の15度」と「下がり傾向の15度」では、その後の管理工程が違ってきます。そうなると、アナログな温度計よりもコンマ以下まで細かく計測できるデジタルセンサーの方が温度の微妙な変化を正確に予測できることになります。昔はそういうことを職人さんの経験と勘だけに頼ってやっていたわけです。

なるほど。日本酒は非常に厳密な管理のもとでつくられているんですね。

ええ。水と米の割合、米に含まれる水分の量、温度によって、出来上がった製品の味が大きく違ってきます。

ところで、昔の酒蔵は女人禁制だったと聞きましたが、今でもそうなのですか。

昔は男が威張っていたというのもありますが(笑)、蔵の中では30kgの米袋を担いだり力仕事が多く、温度の高い麹室の中ではものすごく汗をかくので、しょっちゅう着替えなくてはなりませんから、蔵の中は自然と男の職場になっていたんだと思います。でも酒造りは本来女性の仕事だったと思うんです。それと、昔の酒屋さんには住み込みで働く女性たちがいました。昔は酒屋さんで花嫁修業したというとハクが付いたんだそうです。(笑)「〇〇で働いていたんなら、嫁にもらっても大丈夫だろう」みたいな。

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へぇ~っ、面白い話ですね。

ええ。今は女性も普通に働いています。私の母親の時代には女性も蔵に入っていましたから。

なるほど。西岡本店の酒造りの方針とかポリシーがあれば、それを教えていただけますか。

そうですね。地元の米と地元の水にこだわって造り、気に入って飲んでくださる方を大事にしたい、という感じでしょうか。

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なるほど。日本酒について解説した本などに「美味い日本酒はYK35でつくられる」などと書かれているのを読んだことがあるのですが、そういうお酒とは違うのですか。YK35:米に山田錦(Y)酵母に熊本酵母(K)を使い、35%まで精米すれば美味しい酒がつくれるという公式。)

ええ。確かにこの業界には「品評会で金賞をとれる甘みのあるさらっとした吟醸酒をつくるには、米は〇〇で、酵母はXXで、精米歩合は△△」みたいなレシピが出まわることがあります。(笑)でも地酒というものは、本来その土地の米と水を使ってつくられるものであり、品評会で金賞を取るためにつくられるものではないと思います。他所から来た人は、その土地でとれたものとその土地の水を使って、その土地でつくられたお酒を飲みたいだろうと思うんですよ。それが本来の地酒というものではありませんか。

ええ。そうですね!

ですから、その土地でとれた米とその土地の水でつくったお酒を嘘偽りなく提供することが「本物」だと考えているんです。あとは購入して飲んでくださるお客さんが判断してくださればいいと思います。

なるほど。それが「桜川本物づくり委員会」の方針でもあるんですね!

(注:西岡さんは、春奈さん、ペンギンの井上さん、五所駒瀧神社の櫻井さん、伊勢屋旅館の女将、橋本旅館の女将、大関石材店の大関さん、星いづみさん、お花とフレンチデコの稲葉さんたちと「桜川本物づくり委員会」という団体を結成して、その代表も務めています。これは2015年に上野沼の森コミいちに出店した桜川本物づくり委員会の屋台。)

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そうです。とにかく、そこでなければ味わえない、そこに行かなければ体験できないといった「空気感」を大切にしながらモノづくりをして、それを気に入ってくれた人を大切にしたいというのが委員会の方針なんですよ。地元の人が「うちの地元にはこういう良いものがあるんだよ」と自慢できるようなものをつくりたいです。

なるほど、なるほど。それでやっとあの日森コミいちの屋台で僕らが感じたことを理解できましたよ!御神米のおにぎりと古代米のお酒は、地元でとれたものを使って地元でつくられた、まさに本物の味がしました!

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そうでしたか!うちとしてはあの出店はチャレンジだったんですが、意図したことが伝わっていて良かったです!

ええ。あのおにぎりとお酒が会場の中でいちばん印象に残りましたし、だからこうやって真壁に来ることになったんです。(笑)

ありがとうございます。ついでに話すと、桜川本物づくり委員会のメンバーには共通する思いがあるんです。それは「自分の代だけで終わらせるわけにはいかない、次の代につないでいかなければならない」ということです。私もそうですが、委員会のメンバーはここで生まれ育ち、一度ここを離れ、戻ってきた人ばかりなんです。家業が好きで継いだというよりは「仕方なく継いだ」というのが共通項でしょうか。(笑)でも、いったんここを離れているから、ここの長所も短所もよくわかるし、良いものは残して必要ないものはなくしてしまってもいいんじゃないか、もっと地元でできることがあるのではないかと感じているんです。

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そうなんですか!僕も茨城で生まれ育ち、その後ずっと他所で暮らして戻ってきたのでよくわかりますよ!

そうなんですか!うちは私で8代目なので、まだまだペーペーの方なんですが、五所神社の櫻井さんのところは1000年以上続いていて、40代目なんです。それだけ続いてきただけでも奇跡ですが、それを引き継ぐプレッシャーや重みはハンパないです。子どもにはなかなか理解できないものがありますよね。

そうですよね。うちも実家が商売やっていて、弟が3代目を継いでいるのですが、家業を継がなければならないというプレッシャーは子供の頃からあったのでよくわかります。

ええ。ここを捨てるわけにはいきませんし、ここで必死に生きていくしかありませんから、私も委員会のメンバーも次の代に引き継げるように良いモノをつくって残して行きたいと思っています。

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そうですね。今日は長く時間を取っていろいろとお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。

いえいえ、こちらこそわざわざお越しいただいて、話を聞いていただいて感謝しております。

(西岡さんは僕らの予想していた通りの人物でした。笑顔で「家業を仕方なく継いだ」と控えめに話されていたのが印象的でしたが、仲間とともに地元を盛り上げ、地元が誇れる良いものをつくっていこうという内に秘めた情熱が伝わってきましたよ。)

西岡本店の銘酒「花の井」「明笑輝」「ふるさとさくら」「ちとせのよろこび」

お待たせしました!西岡本店の新酒が出来上がったのでご紹介します!

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■花の井
創業当時からの伝統の味を伝えるシリーズ。茨城県内外でとれた上質な酒米(山田錦・五百万石・ひたち錦・日本晴)を筑波山水系の伏流水で仕込んでいる。大吟醸、純米吟醸原酒、純米酒、本醸造、純米大吟醸古酒などがあり、予算と好みに応じて選べる。

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■明笑輝
2012年から茨城県立真壁高校農業科との産学連携で誕生したシリーズ。真壁高校の田でとれたコシヒカリや山田錦を、筑波山水系の地下水と桜川市磯部の山桜から採取した「桜酵母」で仕込んだ、純桜川市産の日本酒。東日本大震災からの復興と桜川市のさらなる発展への祈りが込められたこのシリーズには西岡本店の個性が光っており、米を作った真壁高校農業科の生徒達も仕込みに参加し、2013年度の「GOOD DESIGN AWARD」を受賞。純米大吟醸生原酒、純米吟醸生原酒、純米吟醸原酒-熟-から選べる。

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■ふるさとさくら
真壁高校産のコシヒカリを筑波山水系の地下水と桜川市の山桜の花びらから採取した酵母で仕込んだほんのり甘いお酒。原料すべてを桜川市産にこだわり、熟練杜氏と真壁高校の生徒達が心を込めてつくった純桜川市産。

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■ピュア茨城
茨城県で開発された「ひたち錦」と「ひたち酵母」を筑波山麓の伏流水で仕込んだ純茨城県産の特別純米酒。茨城県内にある32の酒蔵が「同じものは米・酵母、違うものは水と技」をキャッチフレーズに、同じ米と酵母で競い合って造った日本酒。各蔵の個性が存分に発揮され、バラエティに富んだ味に仕上がっているので、飲み比べてみるのも良い。

 

■ちとせのよろこび
千年以上の歴史を持つ桜川市の五所駒瀧神社で、アヒルを使った無農薬・有機農法で栽培された御神米(古代米・コシヒカリ)を神社境内の谷川の清流を使って仕込んだ日本酒。

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古代米は普通の玄米と色が異なるため、酒の色にも反映される。

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■蔵元梅酒
日本酒をベースに、桜川市やつくば市でとれた青梅(白加賀)を使って仕込んだ梅酒。甘さが控えめですっきりとした飲み口が特長。

 

■本格焼酎
「日本酒製造元らしい焼酎造り」をモットーにつくりあげた焼酎シリーズ。桜川市産の原料を筑波山水系の伏流水で仕込んでおり、本格むぎ焼酎、本格米焼酎、本格そば焼酎から選べる。

 

■季節限定商品
「しぼりたて生原酒」や「酒粕」など、季節だけのお楽しみ限定商品。

 

■海世紀
兵庫県産の山田錦、熊本県産のヒノヒカリ、チヨニシキを三浦沖海洋深層水で仕込んだシリーズ。青を基調とした涼しげなパッケージデザインと、海洋深層水のミネラルによる吟醸香とすっきりした味わいは夏にピッタリ。純米大吟醸、大吟醸、純米吟醸、特別本醸造、特別本醸造生貯蔵酒から選べる。

 

この中で僕らが試してみたのは、以下のお酒。これはあくまで個人的な感想なので参考までに。

花の井 純米大吟醸古酒

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40%精白の富山県産五百万石を筑波山水系の伏流水で仕込み、蔵の中で5年間熟成させた贅沢なお酒。アルコール度数は16%~17%で、日本酒度+3とやや辛口。個人的に「古酒」を飲むのは初めてでしたが、熟成によるコクのある味わいと香りが印象的で、冷でも常温でもぬる燗でもいけます。新酒よりも味と香りが濃厚なので、意外と肉料理にも合うように感じました。

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また、ブランデー感覚でチーズやサラミ、生ハムなどとともに、ちびちびといただくのもいいですね。

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花の井 純米吟醸原酒

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50%精白の富山県産五百万石を筑波山水系の伏流水で仕込んだお酒。アルコール度数は16%~17%で、日本酒度+4とやや辛口。「花の井」シリーズでスタンダードな一本を選ぶならこれでしょうか。「純米原酒」の加水処理されていない濃厚な味わいと、洗練された爽やかな吟醸香が楽しめます。冷でも常温でもぬる燗でもいけますが、個人的におすすめなのはロック。魚や淡白な和食系の料理との相性が良いように思います。

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ふぐにもピッタリ!

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明笑輝 純米吟醸生原酒

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60%精白の真壁高校産の一等米コシヒカリを100%使用したお酒。アルコール分16%でやや辛口。今回いただいた西岡本店のお酒の中で僕らがいちばん気に入ったのがこれ。「花の井」シリーズとは酒米と酵母の種類が異なるため、同じ「純米吟醸原酒」でも味わいが全く異なります。「花の井」は洗練された定番としての味と香り、「明笑輝」は搾りたてのフレッシュで素朴な味わいという感じでしょうか。米と麹のエキスが詰まった濃厚な味と香りを堪能したい方にお勧め。冷、常温、ぬる燗、どれでもいけますが、お勧めはロック。

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合う料理の守備範囲はかなり広いと思います。これはちゃんこ!

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ちとせのよろこび

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古代米特有の果実酒のような香りと甘酸っぱい味わいが特長のお酒で、色も香りも味わいも普通の日本酒とは全く異なります。右が大吟醸古酒、左がちとせのよろこび。色がかなり違いますよね。日本酒の奥の深さを感じます。

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いろいろ試してみましたが、スパイスをふんだんに使ったカレーやチキンみたいな料理に合うように感じました。これは五所駒瀧神社の古代米を使ったカレー。古代米は身体が喜びますよ!

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というわけで、ざっと紹介しましたが、全体的に線が細いのが西岡本店のお酒の特長のように感じました。特に「花の井」にはそれを感じました。真壁の水が柔らかいせいかもしれませんが、つくり手の繊細さも反映されているのだと思います。それが「女性に優しいお酒」の所以なのかもしれません。

また、「明笑輝」を飲むと懐かしくほっこりとした気分になるのは、桜川市でとれた原料(米・水・桜酵母)を真壁の高校生たちが一生懸命仕込んだからなのかもしれません。真壁高校のみなさん、美味しい日本酒をどうもありがとう!これからも飲み続けますよ!先生、生徒さんたちの成績表には◎を付けてあげてくださいね!

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西岡本店のお酒を買える場所・取扱店舗

僕らが西岡本店のお酒を知らなかったのは、現時点での流通量が圧倒的に少ないからです。県外はもちろんのこと、県内であっても真壁以外の場所では、ほとんど目にすることがありません。地酒らしい地酒と言えるかもしれませんが、個人的に水戸の金澤留造酒店、平山酒店などでも取り扱ってほしいところです。(笑)したがって、確実に購入するには西岡本店の小売店舗に行くか、問い合わせるのがおすすすめ。茨城県外であれば、銀座の茨城マルシェで取り扱いがありますし、定期的に開かれる「物産展」などのイベントに出店しているので、そこで購入することもできます。(詳細は後述の「西岡本店のイベント」をご覧ください。)

西岡本店の小売店舗

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試飲もできます!

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㈱西岡本店小売販売所 茨城県桜川市真壁町田6-1
TEL:0296-55-1171 FAX:0296-54-1310 E-Mail:info@hananoi.jp

茨城県桜川市真壁町田6-1

 

茨城マルシェ

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中央区銀座1-2-1 紺屋ビル1F 03-5524-0818 10:30~20:00

中央区銀座1-2-1 紺屋ビル 1F

 

茨城マルシェでは、以下の銘柄が販売されています。

花の井ワンカップ

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花の井大吟醸

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左から花の井大吟醸古酒、ちとせのよろこび、しずく(茨城マルシェ限定販売)

個人的にお勧めなのはしずく。ブルーのボトルにゴールドで茨城県の形がプリントされたお洒落なパッケージで、ひたち錦とひたち酵母を筑波山水系の伏流水で仕込んだ純茨城産の日本酒です。

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また、桜川市の雨引観音の売店では「雨引山」銘柄の日本酒、水戸市の偕楽園東門近くの売店では「蔵元梅酒」が販売されています。

雨引観音売店 桜川市本木1 0296-58-5009

偕楽園売店「見晴亭」 水戸市常磐町1-3-2 029-306-8911 9:00~17:00 無休

「海世紀」は横須賀さいか屋地下、ホテル京急油壺「観潮荘」などで販売されているようです。

西岡本店のイベント

西岡本店は、定期的に開かれる以下のイベントに参加しているので、日本酒好きな方はぜひ行ってみてください。(詳細はこちら

茨城地酒まつり in 浅草花やしき(毎年10月)

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渋谷酒FESTIVAL(宮下公園)

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日本酒フェア(池袋サンシャインシティ)

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関東信越きき酒会(さいたまスーパーアリーナ)

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また、西岡本店敷地内にある登録文化財の米蔵は、改装されてギャラリーとして利用されています。

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ここを会場としてさまざまなイベントが開かれます。(詳細はこちら

震災復興ライブ in 真壁

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ハナノイアナクロニー(筑波大学大学院芸術系専攻の学生さんとコラボした現代アート展)

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真壁のひなまつり
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どれも素敵ですよね!西岡本店がさまざまなイベントや活動を通して地域社会の発展に貢献しているのは、冒頭でも触れましたが、近江商人の伝統が息づいているからなのかもしれません。近江商人には独特な「経営哲学」があります。

三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)
売り手の都合だけでなく、買い手が本当に満足するように商売を行い、商売を通じて地域社会の発展に貢献しなければならない。

始末してきばる
「始末」とは無駄にせず倹約すること、「きばる」とは本気で取り組むこと。
単にケチケチするのではなく、良いものは高くついても長く大切に使い、長期的視点で物事を考えること。

利真於勤
利益は一所懸命に努力した結果に対する「おこぼれ」にすぎないので、営利だけを追い求めてはいけない。

陰徳善事
自己顕示や見返りを期待せずに善い行いをすること。

まとめ

今回西岡本店の酒造りを取材してわかったのは、真壁には

筑波山の北に位置し冬が寒い

米が酒米に適している

山の伏流水を仕込みに使える

という良いお酒を造る上で鍵となる条件が揃っているということでした。

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僕は中学生くらいまで井戸水で育ち、宮水の湧き出る兵庫県西宮市で学生生活を送ったせいか水の味に敏感な方です。振り返ってみると、僕らを真壁に惹きつけたものは、神社のおむすびや古代米のお酒を通じた「水の力」だったのかもしれません。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、正直な感想です。それと、真壁と灘の酒造りが似ている点も興味深く思えました。

今回の酒蔵見学は仕込みが本格的に始まる前の12月初旬に、インタビューは1月中旬に行いました。見学を希望される方は、事前予約が必要ですが、繁忙期(12月中旬~3月)を避けて行くことをお勧めします。

忙しい中で取材に応じてくださった西岡本店の代表とスタッフの方々に感謝します。

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清酒花の井醸造元 株式会社西岡本店 茨城県桜川市真壁町田6-1
TEL:0296-55-1171 FAX:0296-54-1310 E-Mail:info@hananoi.jp

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