日立の海沿いの道をドライブして「国際大道芸」に出かけた日、
初めて訪れた日立のカフェ、ビーチテラス。
本当は誰にも教えたくない素敵なお店ですが、読者の方にだけ特別にお教えします。(笑)
このお店の存在は前から知っていましたが、日立に行く機会がなかったため、
なかなか訪れることができずにいました。
水戸から日立ってちょっと遠いですよね。
久慈川を越えるまでが遠く感じられます。
最近の茨城には素敵なカフェが増えましたが、ここは特別な場所です。
他の人がどう思うかはわかりませんが、僕らにとっては特別な場所なんです。(笑)
帰国してから行った茨城のカフェの中では、ここが一番のお気に入りかもしれません。
僕もかみさんも休みになると、ここでネジを巻きなおすのが習慣になりつつあります。
さて、ナビで住所を検索すると、細い裏通りを海に向かって下っていく、とありました。
で、くねくね曲がりくねった道を、ひたすら海に向かって下っていくと
数メートル先には浜辺が見え、そこから先は下りられなくなりました。
こんなところに本当にカフェなどあるのだろうか・・・
ふたりとも半信半疑になりましたが、ナビが示す通り、
防波堤沿いの細い道をそのまま進んでいくことにしました。
すると人家が何軒か見えてきましたが、看板らしきものは見当たらず、
進んでいくと行き止まりにぶつかってしまったのです。
仕方ないので来た道を引き返すと、
先ほど通り過ぎた一軒屋から、帽子をかぶった女性が出てきて、
僕らが来るのを知っていたかのようにニッコリ微笑むと、
「ようこそ、いらっしゃいませ」
と建物の中へ招き入れてくれたのですが、その方がママでした。
ご主人がマスターで、おふたりで20年前から
ここでカフェをやってらっしゃるそうです。
この日は鈍色の空にちょっと肌寒いくらいの気候だったせいか、客は僕らだけでした。
お店の中は暖かかったので、席につくとホッと気持ちが和み、
うちはコーヒー専門店ですから、と言うママの言葉に従って、
コーヒーとケーキのセットを頼むことにしました。
コーヒーはBrazil Coffee社のグアテマラで、もちろん自家焙煎。
ケーキは自家製で、マスターがつくっているそうです。
美味しい!
こんな美味しいコーヒーとケーキにはなかなかお目にかかれない、
というところで僕とかみさんの意見が一致し、
お茶だけの予定だったのが、他のメニューも試してみたくなりました。
どれもていねいな手作りで本当に美味しい!
ここの料理はなんでこんなに美味しいんだろう・・・
すっかりきつねにつままれたような気分になっていると、ママがこんな話をしてくれました。
むかしむかし、ここがまだカフェじゃなかった頃のこと。
テラスでコーヒーを飲みながら海を見ていると、
散歩の途中で道に迷ったような感じの外国人がやってきて、
コーヒーを一杯いただけないか、と頼むので淹れて差し出しました。
その後、海辺を散歩していた日本人が立ち寄り、
やはりコーヒーをリクエストするので、淹れて差し出しました。
そういうことが何度かあるうちに、いつしかここはカフェとなり・・・
テーブルの上のノートには、メッセージがたくさん残されていました。
どれもここを訪れた人たちが書き残していったものですが、
日本人だけでなく、外国人のものも多く、どの人もコーヒーやケーキ、
食事の美味しさ、お店の雰囲気、ママとマスターのおもてなしを絶賛しています。
まるで故郷に帰ってきたような気がする、と。
ノートに目を通した後、お店の中から窓の外の風景を眺めていると、
なんとなくわかるような気がしました。
席につくと、船のキャビンにいるような気分になり、
あちこちが潮風に洗いざらされて、渋い色合いを帯びていて、
テラスに出ると(ママが言うように)アメリカがすぐ隣のように感じられ、
時間が経つのを忘れてしまうからです。
こんなに海が近いのに、地震の時何の被害もなかったというのは
はじめは信じられませんでしたが、すぐにそのわけがわかりました。
ここには四季折々の花が咲き、
美しい滝の流れがあり、猫もいて・・・
日頃、誰かがここに特別な愛情を注いでいるのが感じられるからです。
その愛情と、ここを愛する人々の心が津波から守ったに違いありません。
ここに来て海を眺め、潮風に吹かれながらコーヒーを飲み、
この場所が持っている「物語」に耳を傾けていると、
何かが心にスッと馴染んでくるのが感じられます。
ここへたどり着くことができたら、招かれたのだと思っても良いようです。
道を教わってもたどり着けない人もいるそうですから。
いつか潮が引いた時に、向こうの岬まで浜辺を散歩してみよう。
ビーチテラス
317-0074 茨城県日立市旭町3-19-25 0294-21-8184
11:30~18:00 金土日祝営業 月火定休